巷ではよくスキルを伸ばして経験を増やして市場価値を上げて転職しよう!という声が聞こえてきます。しかしこの市場価値というものはいかんせん漠然としていてなんだか実態が掴みづらいなあと日頃感じていました。そんな折、この1年で2回の転職活動をしたことと、現在の所属している経営管理ドメイン領域で指標を数式化する訓練をしてきたことから、なんとなく市場価値の正体が見えてきた気がします。本記事では現時点で私が見えている市場価値の実態について整理しようと思います。
私が初めて市場価値についてじっくり考えたのは最初の転職活動を行った昨年のことです。私は一社目でエンジニアとしてキャリアをスタートし、早い段階で管理職に昇進、PdMにキャリアチェンジをしました。また、本業だけでなく、副業やコミュニティ活動を通じて、外部発表や執筆、技術顧問的なことまで色々行ってきました。そのため、自分なりに知名度や実績には自信がありました。
しかし、実際に転職活動に挑んでみると、事業会社やITコンサルの面接官が見ていたのは別のポイント。問われるのは「プロダクトグロース経験」や「SI案件や上流案件での業務経験」であり、企業のPL/BSにどれだけ寄与した経験を持っていて、それが再現できるか でした。そのためいくら副業や登壇経験を語っても評価に結びつかず、採用に至らないことが多々ありました。
この時に痛感したのは、対外的なアクション数とそれに伴って得た知名度や、肩書の派手さは市場価値に直結しないということでした。
そこから紆余曲折あり、現在は経営管理ドメインのプロダクトを取り扱う企業に身を置いてます。この領域では、企業の企業価値(EV)を向上するうえで、ROICやPBRといった無数にある経営指標を以下のように数式やツリー構造で表現することが一般的です。

日頃自分もこういった指標を式や図で示す慣習に染まってきたので、市場価値を式で整理してみることにしました。
現時点で私が出した市場価値の算出式が以下です。
構成要素は以下です
上記の数式と構成要素から、以下のように読み解けます
つまり「スキル単体では弱く、本業の業務として行って得た経験こそが市場価値を押し上げる」ということ。そして、これらの関係式は、実際に採用担当者が目を通す職務経歴書の構造とも一致しています。
職務経歴書の上半分に書ける内容(r=1の内容)のみが直接的に市場価値を押し上げるということです。
市場価値を語るものの中には人的資本×社会資本=市場価値と論じているものが見かけられます
ですが私の整理の中では社会資本は直接的ではなく間接的に市場価値に寄与してくるものと定義しています。
というのも、人的資本×社会資本=市場価値という式を正にして、社会資本を全体に一律で掛けてしまうとバイアスが強すぎてしまうためです。
例を出すと、黙々と組織内でPL/BS貢献をしてきたスペシャリストと、所属企業のバリュードライバではなかったが対外発信が多く著名人の知り合いが多い発信者を比べたときに、発信が得意なだけの人が市場価値が高いということになってしまうためです。
この仮説は先述の私の原体験とギャップがありますし、採用担当者目線においても違和感があるのではないかと思います。
では社会資本はどのように市場価値に影響を及ぼすのでしょうか。
まず、「社会資本が高いこと」がどのような効果を発揮するのかを整理すると、大きく以下3つの要素に分解可能です
これらを整理すると、
1(とっかかり) → 市場価値そのものではなく“機会の多さ”であるため、それをものにできるかは 人的資本側の実力次第。よって市場価値そのものではなく、入力機会の多さに過ぎない。
2(ノックアウト) → 市場価値を減衰させる係数(≤1) としてはありえるため衛生要因(満たされなければ不満/不信につながる要因)。
3(Hub) → 1,2とは違い構造化されたスキルであるため、実は人的資本の一部。ネットワークスキルや経験としてSやEに含めるべき。
つまり社会資本は直接的に市場価値(PV)の構成要素とはなりません。ただだからといって社会資本の市場価値への影響は全くの0というわけではなく、どういったコンテキストで発揮されたか(r)が明確にある状態で、スキルや経験として人的要素の一部になって初めて市場価値に寄与するものとして整理をしました。
市場価値はあくまで絶対値であり、戦闘力のように捉えることはできますが、結局のところ転職活動はマッチングであり、企業と合うかどうか、マッチ度で考える必要が出てきます。
そこで、市場価値(PV)と企業価値(EV)から算出される企業と候補者のマッチ度(M)も定義してみました。
まず、市場価値や企業価値は、それがそもそも存在しない0の状態から、どのような価値をどのような方面に発揮できるかという意味でベクトルとして表現することができます。
そう考えると、マッチ度は単純にEV→とPV→の内積で表せます。
図にするとしっくり来ると思います。.jpg)
例えば、企業が発揮している企業価値が「日本企業の経営課題を解決する」だとして、候補者の市場価値が「Web表現で新しい体験を作り出せる」だったとしましょう。この場合お互いのベクトルは重なり合ってはおらず、2つのベクトルの取りうる角度θが生まれている状態になっています。ただ、完全に関係がない方向性とも言い切れません。
つまり、両者の価値が生み出す価値は当然存在するので絶対値としては確実に正の値なのですが、重要なのは向いている方向性があっているかどうかなので、θが広がれば広がるほど(ずれればずれるほど)cosθは1 -> 0と下がっていくため最終的な内積(マッチ度)は下がっていってしまうということです。またθ>90°の値を取るとcosθ<0となるため、マッチ度がマイナスになってしまいます。これは価値の発揮先がそもそも大きく異なるので全くマッチしない状態と言えます。
ここで重要なのは、内積なので「大きさ」と「向き」の両方が効くことです。
つまり候補者がどれだけ強い市場価値を持っていても、企業が求める方向とズレていれば(cosθが小さければ)、マッチ度は高くならないのです。
さらに整理を進めると、企業も個人も「今」と「未来」の両面で価値を考えていることも考慮しないといけません。
これを整理すると、マッチ度は次の3項式で評価できると考えました。
図解すると以下のような形です。.jpg)
例えば先程の企業価値「日本企業の経営課題を解決する」候補者の市場価値「Web表現で新しい体験を作り出せる」を例として考えると、今後企業は新たに表現力をアップして、それを新たな企業価値(EV')にしていきたいという目論見があったとします。すると候補者の現状持っている市場価値(PV)がそこにすっぽりハマり、入社することでEV+PVとベクトルの合成が起きてEV'の実現が近づきます。そのためマッチ度に寄与するといえるでしょう。
つまりマッチ度は多項式化され、以下のように分解可能と言えます
あとはこれらの項に対して、企業により重み付け(即戦力がほしい、第一人者がほしい、長く在籍してほしいなど)がなされ、各項に係数が掛かり、結果としてマッチ度が算出されるといった流れで整理ができます。
上記の算出式から現時点では市場価値について以下のような特性があると言えます
つまり市場価値を高めるうえでは、本業における経験が、転職後のPL/BSに寄与するアクションを再現持ってできるかという観点で評価可能であるため最も重要であり、かつそれが企業のもっている/伸ばしたい価値と一致するかどうかで本質的なマッチングを左右するという結論に至りました。
副業や趣味での開発、コミュニティ活動がどうにも転職活動で刺さらなかったのはこれが原因だったのではないかと今なら思います。会社のバリュードライバーとして企業のPL/BS、企業価値向上に寄与できている状態が結果として市場価値を向上させていると言えるのだと思います。
※本記事での主張は著者が所属する組織の公式見解ではなく、あくまで著者個人の意見です。
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